自己破産と不動産

自己破産を希望している方の中には、不動産を持っているためにいろいろな悩みをお持ちの方もおられると思います。
このページは、そのような方の悩みを解消していただくために「自己破産に強い弁護士」福本法律事務所(東京弁護士会所属)が作成しました。

不動産は破産管財人による処分対象となります

不動産は大きな値段がつく財産であり、破産をする人にとって重要な財産でもありますので、不動産は破産管財人によって処分されるのが原則です

破産管財人が不動産を処分する場合の流れ

破産管財人が不動産を処分する場合、不動産業者と仲介契約を結んで、買主探しをします。
不動産業者や買い主候補者が自宅を見たいと言ってきたら応じるべきです
買い手が見つかって、担保権者との担保権を消滅させるための交渉も成功すれば、破産管財人と買い主との間で代金決済をして不動産の引き渡しをしますのでそれまでに引っ越しをする必要があります
なお、破産管財人と担保権者との交渉の中で売買代金の中から引っ越し代を出すことを認めてもらえることがあります。だいたい20万円から30万円くらいが相場です。

破産管財人からの不動産買取

破産管財人は債権者への配当を増やすために財産処分をするので、破産管財人から財産を買い取るとか親族に買い取ってもらうこともできます
値段は相場の値段となります。不動産鑑定士の鑑定をするのが正確なのでしょうが、実際は複数の不動産業者の査定額の平均値ということで時価を決めるケースが殆どです
破産管財人が第三者に売却する場合、不動産業者への仲介手数料がかかりますが、親族への売却であれば仲介手数料がかかりませんし、引っ越し代の問題もなくなるので、担保権者への支払額が増えるというアピールも可能です。
ただ担保権者の中には親族売買そのものを認めないということもあります。また、不動産購入代金が破産者のお金ではないのかという疑問を持たれることもあることからその疑問を解消する必要もあります

破産前の不動産売却

破産前に不動産を売却することはできますが、いくつか注意点があります。詳しくはこちらをご覧ください。

破産前の不動産処分が破産管財人から否認される場合

破産前の財産処分が、破産管財人から正当化することができないと判断されたら、否認といって処分の効力が否定されます
どのような場合に否認されるかというと、支払不能状態で破産の配当手続がとられると債権者の配当が減ると知りながら相場よりも著しく安い値段で不動産を売却した場合、債務整理受任通知を送った後で相場より著しく安い値段で不動産を売却した場合、適正な値段であっても財産隠しのために不動産を売却した場合、受任通知後と受任通知前6ヶ月以内に不動産を贈与した場合です。
このように否認される場合は、財産を譲り受けた人は破産管財人から譲り受けた財産の返還請求をされることになります。もっとも否認にあたるような財産処分をする理由の一つには親族が不動産に住み続けたいと思っている場合などがありますが、このような場合に財産を譲り受けた人と破産管財人の交渉で財産に見合う金額を破産管財人に支払うことによって否認権行使をされずに財産が残せることもあります

福本法律事務所では、自己破産前の不動産処分についての様々なご相談をお受けいたします。

ローンがついている家を持っています。このままの状態で自己破産をした場合、家をすぐに出ないといけないのですか?

これも自己破産をするとすぐに競売にかけられてしまって、競売にかけられたらすぐに家を出なければいけなくなるとの誤解から生じる質問です。

まず、競売についてですが、ローン債権者は自己破産をしたからといってすぐに競売にかけるようなことは通常ありません(これまでにローンの支払いをずっと滞っているような場合は別ですが)。

まず、ローンが滞って数ヶ月経過した場合、あるいは弁護士から債務整理の受任通知を受け取った後、保証会社がついていれば保証会社に代わりにローンを支払ってくれるよう求めて(代位弁済といいます)、保証会社にローン債権が移ります

保証会社に移った場合、ローン債権の一括弁済あるいは任意売却を求めてきます。
一括弁済や任意売却の見込みがないと判断されて初めて担保権に基づく競売申立をするのが一般的です。

ですので、債務整理の受任通知や自己破産をしてもすぐに競売を申し立てられることはなく、まず一括弁済や不動産の任意売却ができないかの様子見をしてくる。
どちらもできそうにない場合に競売申立がされるものと理解してください。

そして、不動産競売がされても、競売で不動産が落札されて、落札者が裁判所に代金を納付した時点で所有権が落札者に移りますので、それまでは居住することはできます。
代金納付までは競売が始まってから最短でも半年程度はかかるのが通常です

もっとも、ローン付きの不動産を持って自己破産をして、破産管財人が選任された場合は破産管財人から任意売却を求められるのが通常です。
任意売却に成功した場合は、不動産の所有権は買い主に移りますので、家を出て行かなければいけなくなります。

任意売却とは何ですか?

担保権がついた不動産をもっている人が、担保権を持っている債権者と交渉をして一定の金額を支払うことを条件に担保権を外してもらうよう求め、担保権を持っている人がこれに応じることによって不動産を売却する方法です。

ローンがついている不動産を持っている人が破産した場合、競売されてしまうというイメージを持っている方もおられると思います。

しかし、任意売却という方法で不動産を処分すると、競売される場合よりも不動産が高く売れること、競売の費用がかからないこと、住んでいる人が引っ越し代をもらえるケースも多いなどといったメリットがあることから、ローン付き不動産を持っている人が不動産を処分する場合に競売ではなくて、任意売却という方法によることが多いです。

このような任意売却をする場合に、ローンの債務額の方が不動産の売却額を上回っていることもあります。このようにローン債務の全額の支払いがされない場合でも担保権者が承諾さえすれば任意売却をすることができますが、支払がされなかったローン残債務額は残ります。

債務者にとって任意売却のメリットはありますか?

任意売却は債権者にとってメリットがあるということはよく言われています。
競売よりも高く売れる、確実に回収できるという点です。
では債務者にとってはどうでしょうか?破産をしないのであれば競売よりも高く売れるというのはメリットになりますが、破産をすると決めている人にとっては、高く売れて債務が完済できるならばともなく、高く売れようが安くうれようが債務が残るのであれば、どっちみち破産をして免責されるというのであれば高く売れようが安く競売にされようがどっちでもよいことになり、高く売れることについて債務者にはメリットがないということになります。

また引っ越し代を取得できるという点でメリットがあるということを言う人もいますが、任意売却の引っ越し代で得ることができる金員は10万円から30万円が相場といったところで、最大でも50万円と言われています。引っ越しをすると新たな住居の家賃を支払い続けることになるのですが、任意売却をせずに競売で買受人が決まるまで住み続けるという方法をとると買受人が決まるまでの間、住宅ローンを支払わず、家賃相当額も支払わずに住宅に居住することができるので、そういう意味では任意売却をせずに競売で買受人が決まるまでの間居住し続けた方が金銭的なメリットが大きいようにも思えます。本来であれば負担すべき家賃に見合う金額を積み立てておけば、任意売却でもらえる引っ越し代よりも多くのお金が残せるように思えます。

しかし当職が長年に亘って得た経験によれば、このように任意売却をせずに競売で買受人が決まるまでの間居住し続けた人で家賃に見合う金額の積み立てができた人はいませんでした。そうすると買受人から明け渡しを求められるというトラブルを生じることになります。

また固定資産税やマンション管理費の滞納がある場合、任意売却を進めた場合、担保権者と滞納固定資産税やマンション管理費があることを伝えた上できちんと交渉して担保権者の了解をとることができれば、不動産の売買代金の中から滞納固定資産税やマンション管理費の支払に充てることを認めてもらえる可能性があります。場合によっては自己破産申立の弁護士費用の捻出を認めてもらえることもあります。ところが任意売却をせずに競売手続をとった場合、滞納固定資産税に配当金が回る可能性は低いです(担保権者と税金とで配当がどっちに優先されるかというのは法律で決められていますが、担保権者が優先することが多いです)。ですので滞納固定資産税が残ってしまいます。破産をしても非免責債権になるのでこの固定資産税の支払義務が残ってしまいます。
滞納管理費について破産手続開始前の部分は破産免責の効力が及びますので、免責を受けられれば支払必要はありません。ただし破産手続開始後の滞納管理費は破産債権ではないということになり、免責の効力は及びません。ですので支払義務が残ることになります。もっとも滞納マンション管理費は新所有者に支払義務が承継されることになるので、管理組合は新所有者にマンション管理費の請求をするのが通常で新所有者が支払うことになります。ただこの新所有者がマンション管理費を滞納した旧所有者に対して旧所有者が支払うべきマンション管理費を支払ったとして、旧所有者に求償請求される可能性があります。そしてこのような請求を認めた裁判例もあります。
ですので任意売却をせずに競売で処理をした場合、固定資産税やマンション管理費の滞納があるとこれが清算されずに残ってしまうというデメリットがあります。
なお私が受任している案件の中で、私が受任する前に不動産業者に固定資産税を清算できると言われて不動産業者に任意売却を依頼したが、固定資産税が清算されずに残ってしまったというケースがありました。ですので、任意売却を進めるにしても依頼する相手を慎重に選ぶ必要があります。

さらに心理的な問題ですが、競売手続が始まると、官報という国が発行する新聞のようなものに競売にかけられた事が記載されるので、競売を扱っている様々な業者から手紙が沢山届くようになります。また裁判所の執行官が現況調査といって競売にかけられた不動産の調査に来ることもあります。この事から競売にかけられたことが近所に知られてしまい、不動産に住みずらくなるという事もあります。

ですので、私は、金銭管理がきちんとできて競売の買受人が決まるまでに50万円以上の貯金を作ることが出来る人、固定資産税やマンション管理費の滞納がない人、競売をかけられることに心理的なプレッシャーを感じない人などでない限りは、任意売却によって不動産を処分した方がよいと考えます。

自己破産をしたいのですが、不動産共有持分所有権を持っています。破産するとこの不動産共有持分所有権はどうなってしまうのでしょうか?

破産管財人が選任された場合には、この不動産共有持分所有権が破産管財人の処分対象の財産となります。

破産管財人が処分できるのは不動産共有持分所有権であって、不動産全体の所有権は持っていないので不動産をそのまま売ることはできません。

このような場合破産管財人は通常、他の共有持分所有権者に対して共有持分所有権を買い取ってくれるよう求めることが多いと思います。

不動産共有持分所有権の価値が低く考えられていることから、相場よりも安く持分所有権の売買が成功する可能性はあります。

ですが、不動産共有持分を持っている人には共有物分割請求権が認められています。
この共有物分割請求権というのは、共有になっている不動産を共有でない状態にするための制度ですが、交渉が成立しないと裁判所から不動産を競売して共有している人で代金を分けるよう命じられる可能性もあります。

破産管財人から共有物分割請求権があることを主張されて結果的に他の持分所有者が相場の金額での買い取りをせざるを得なくなる可能性もあります。(詳しくは共有物分割請求のサイトをご覧ください)

固定資産税やマンション管理費を滞納していますが、これはどうなりますか?

任意売却が成立すれば、売却代金の中から固定資産税やマンション管理費の精算がされるのが通常です。

では任意売却が成立せずに不動産が競売で処分された場合はどうなるでしょうか。

まず固定資産税ですが、競売手続で担保権と固定資産税などの税金のどちらが優先して配当の対象となるかですが、担保権設定登記の日と税金の法定納期限等の年月日の先後によって優先順位が決まるものとされています。
通常は担保権設定登記の方が固定資産税の法定納期限より前ですので、担保権が配当で優先されます。 優先された担保権の配当の後で固定資産税に対する配当が行われますので、いわゆるオーバーローン状態の時は固定資産税は競売で配当金を受け取ることができない事が多いということになります。

破産手続では、財団債権又は優先的破産債権として一般の債権者より優先して支払を受けることができます。 破産手続でも支払がされなかった場合ですが、固定資産税のような税金には免責の効力が及びませんので、免責後も配当を受けられずに残った固定資産税の支払義務が残ります。

マンション管理費ですが、破産手続開始決定前のマンション管理費は自己破産で免責決定を受ければ支払義務はなくなります

しかし、破産手続開始決定後のマンション管理費には破産免責の効力は及びません。 破産はあくまで破産手続開始決定までに生じた債権について破産手続開始決定までの財産で清算するものですので、破産手続開始決定後に生じた債権まで免責の効力を及ぼすことはできないのです。

ですので、破産手続開始決定後のマンション管理費の支払義務が生じることになります。
もっとも、マンションが競売で落札した場合に、落札でマンションを取得した人は前の所有者が払っていないマンション管理費の支払義務を引き継ぐことになっていますので、落札者がマンション管理費を支払うことが多いとはいえます。

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