経営者の自己破産のポイント

会社を破産させるあるいは個人事業主が自己破産をすると決めると、様々な問題がふりかかってきます。今までの業務と動きが違ってきますので戸惑うこともあるかと思います。倒産処理の経験がない方が殆どだと思われますので、それも当然だと思います。
自己破産に強い福本法律事務所では、豊富な破産管財業務の経験を踏まえて、破産申立前にやるべきこと、やるのが望ましいが必ずしもやる必要がないこと、破産申立前の業務の注意点などについて詳しくお話をさせていただきますので、破産申立の不安が解消でき、できるだけ経済的負担を軽くして、余計な混乱を起こさないように、破産申立をすることができます。
以下では、ポイントとなる点について説明させていただきます。

優先して行うべきこと

事務所・店舗の明け渡し

これは、事業を継続するという例外的な場合以外は最優先で行うべきことです。
明け渡しをしないままで破産手続が始まると、破産手続が始まった後の賃料は財団債権といって他の債権よりも優先して支払うべき債権になってしまいます。明け渡しが遅れれば遅れるほど財団債権となる賃料が増えて、債権者に配当できる財産が減ってしまいます。債権者にできるだけ迷惑をかけないために事務所店舗の明け渡しは最優先で行うべきことです。

従業員の解雇もしくは解雇予告

従業員を雇用したままで破産手続が始まると破産手続後の給料も財団債権といって他の債権より優先して支払うべき権利となってしまいます。そうすると、他の債権者に配当できる財産が減ってしまいます。ですので破産手続をとる前に従業員を解雇するのが原則です。
ただ管財業務を行う上で従業員に管財人の補助者として働いてもらった方がよい場合は従業員を即時解雇するのではなく、解雇予告をしておくだけにした方がよいこともあります。これは破産管財人候補者と協議した上で決めます。

従業員の給料の支払い

債権者に少しでも多く配当できるようにするためには、在庫商品をできるだけ高額で売れるようにしたり、税金還付が可能な場合に還付が受けられるような状態にしておく必要があります。そのために従業員の協力が欠かせません。しかし、未払給料があると協力を得るのが難しくなります。この意味でも従業員の給料支払いは優先的に行うべきです。
このように言うと、従業員の給料だけ支払うと後で破産管財人から偏ぱ弁済(一部の債権者のみ支払うこと)だとして否認されないかと心配される方もおられると思います。
しかし従業員の未払給料のうち破産手続開始前3ヶ月の分は財団債権、それ以外の部分は優先的破産債権となります。優先順位は違うのですがいずれも一般の債権より優先して支払うべきものとされています。ですので従業員の給料を優先的に支払っても後で破産管財人から否認されることは基本的には考えられません。
なお、従業員の給料を払おうとしても払うだけのお金がないと言う方もおられると思います。
もし売却可能な財産があれば売却してでも支払った方がいいです(売却代金の相当性に注意して、代金の使途を明確にする必要がありますが)。
それでも難しければ、労働者健康福祉機構による賃金立替払い制度の利用ができるようにする方法が考えられます。詳しくは該当ページをご覧いただだきたいのですが、最大で未払賃金の80%の立替払いを受けることができます。但し立替払いの対象となるのは破産など申立日の6ヶ月前から2年以内に退職している場合の未払賃金です。ですので事実上倒産して退職してから6ヶ月以上経過して破産申立をした場合には賃金立替払いを受けることはできません。このようなことがないようにするためには事実上倒産して従業員を退職させてから6ヶ月以内に破産申立をする必要があります。

解雇に伴う処理

従業員の解雇に伴って生じる手続を行う必要があります。
源泉徴収票の交付
市区町村へ給与所得者異動届の提出
年金事務所へ被保険者資格喪失届の提出
離職票の交付
退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書の受領

帳簿類の保管・財産の保全

債権者に与える迷惑を最小限にするためにも少しでも多くの配当ができるようするためにも、帳簿類の保管、財産の保全を行って破産管財人に引継ぎができるようにすべきです。
例えば労働者に未払給料があって賃金立替払制度を利用する場合、破産管財人が未払賃金の証明書を作成するためには賃金台帳が重要な証拠となりますが、賃金台帳がないと証明に非常に苦労することになります。

場合によっては行うべきこと

税金の申告

法人の代表者の方で破産申立をする前に事業年度が終了するので確定申告をした方がよいのではないかという疑問を持たれる方もおられると思います。
本来であれば確定申告をする必要があるのですが、破産直前の事業年度は赤字の会社が殆どであり、法人税が発生しないと思われます。このように法人税が発生しない場合に確定申告をしなくてもとがめられるような事はありません。
ですが、当該事業年度が赤字でも前の事業年度が黒字で法人税を納税している場合、破産管財人は今の事業年度の赤字を前の事業年度に繰り戻して前の事業年度で納付した法人税の還付を受けることができます(但しこれは破産手続開始決定がされた場合に破産管財人が行うことができるというものであり、法人代表者が欠損金の繰り戻しによる法人税の還付の手続をとることはできません)。破産管財人が欠損金の繰り戻しによる法人税の還付を受けるには、赤字になった事業年度の確定申告が期限内に行われていることが必要となります。このように欠損金繰り戻しによる法人税還付が受けられる場合には、期限内に確定申告をすると債権者への配当財産を殖やすことができますので、確定申告すべきことになります。

余裕があれば行うこと

税金、社会保険料の支払

これは破産法上、優先して支払うべき債権となりますが、この支払がされないことによって不利益を受ける債権者はいませんので、無理してでも支払っておくべきものではありません。
従業員の給料を源泉徴収したが、源泉税を納付していないので後で従業員に税務署から請求が来ないかとか、健康保険料や厚生年金保険料を給料から従業員負担分を預かっているが納付していないので後で従業員に支障がないかを心配される方もおられますが、いずれも事業者に支払義務が発生するものであり事業者が支払わない場合に従業員が支払義務を負うものではありません。また、健康保険や厚生年金の給付に影響を与えるものでもありません

行う場合には慎重にすべきこと

資産売却

破産する場合は財産をそのまま破産管財人に引き継ぐのが原則です。
しかし、破産手続費用を用意するためとか、個人の方の場合で今後の生活のために99万円の現金を手元に残しておきたい場合、財産を残すために親族などに買い取って貰う場合などで破産前に財産処分することを希望される場合もあります。
破産法では、破産前の財産処分を一律に禁止してはいません。
しかしながら、財産を不当に安く売却すると破産管財人から否認権(破産手続前に破産者が行った行為の効力をなくす権利)を行使されて財産を破産管財人が取り戻して破産管財人が改めて財産処分をすることがあります。
また、仮に適正な価格での売却であったとしても売却代金の使途が明確にならないと、財産隠匿にあたると評価されて、免責不許可事由に該当する可能性もあります。
ですので、破産前の財産処分そのものは禁止されていませんが、破産管財人による否認権行使の可能性、免責不許可事由に該当する可能性もありますので、このような問題が起きないよう慎重に行う必要があります。

行ってはいけないこと

預金を下ろす前に金融機関に破産予定であることを伝えること

預金を下ろす前に借入をしている金融機関に破産予定であることを知らせると、金融機関は自分の債権を保全する必要があると考えて預金の引き出しをできないような措置を講じます。あとで預金と貸金とを相殺することになります。ですので金融機関に破産予定であることを知らせずに金融機関から預金を引き出す必要があります。
逆に、金融機関から預金を引き出した後であれば、金融機関に対して破産予定であることを知らせるべきです。金融機関に対して破産予定であることを知らせておくとこの口座に破産を知らせた後で取引先から振り込まれた売掛金について金融機関は貸金と口座に入金された金額とを相殺することが法律で禁止されているからです。こうすると他の債権者に配当できる財産を殖やすことができますので、債権者にできるだけ迷惑をかけない方法とをとるという意味からも、預金を引き出した後は直ちに金融機関に破産予定であることを知らせるべきです。

税務署に破産予定であることを伝えること

税務署は破産予定であることを知ると直ちに税務署が把握している財産に対して滞納処分をかけてきます。そうすると債権者に配当できる財産が減ってしまう可能性があります(滞納処分をかけられるような財産がなければその心配もありませんが)。破産手続が始まった後は滞納処分をかけることができなくなりますので税務署には破産予定であることを知らせずに裁判所からいきなり破産手続開始の通知が届くようにすべきです。

否認権の対象となる行為、免責不許可事由になる行為

これを行っていけないことはもちろんです。否認権行使は破産管財人と財産を処分した相手あるいは弁済をした債権者との問題ではありますが、財産を処分した相手や債権者に迷惑をかけることになりますのでこのようなことは行うべきではありません。
どのような行為が否認権行使の対象となるか、免責不許可事由となるかは別のページで解説させていただきます。

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